フジバカマがようやく咲きました

2011.11.30

写真はきく科の多年草フジバカマです。秋の七草に数えられているのはご存じのとおりです。きく科の花は1輪に見えるのが実は独立の多数の花(小花といいます)の集合であって頭花と呼ばれていることが特徴です。普通1個の頭花はタンポポに見られるように数十個以上の小花で構成されていますが、フジバカマの仲間の頭花は例外的に少数(普通5個)の小花で構成されます。右の花の拡大写真で白い円で囲ったのがひとつの頭花でまだ花が開いていませんが、上の方に見られる開いた花ではめしべの先が2裂して伸び、白いヒゲのように見えます。写真の1本の花茎は約100個の頭花ですから約500個の小花から構成されているのです。

三貫清水に咲いているのはフジバカマだと思っていたのですが、最近フジバカマとサワヒヨドリとの交雑種でサワフジバカマと名付けられているものが「フジバカマ」の名で販売されて広く出回っていることを知りました。いろいろ調べれば調べるほど、純粋なフジバカマなのか交雑種なのか分からなくなってしまいました。どなたかお分かりになる方に教えていただきたいと思っています。

フジバ.JPG

次はきく科の1年草でメキシコ原産の帰化種コスモスです。半ば野生化しているように見えます。花の少ない秋に美しく咲くので、街の美化、緑化植物として植える運動が行われたりすることがあります。長野県のある町で、「コスモス街道」と名付けて、街のボランティアの老人クラブの皆さんがせっせと植える活動をして有名になっているところもあるようです。でも、生物の多様性の保全の観点からすると、外来種や栽培種をやたらに植えることは多様な生物で構成される自然の破壊につながりかねないという見解があります。河原などにコスモスを大量に植えて育てると、フジバカマなど野草を絶滅に追い込むことになるというのです。せっかく街の美化や自然の保護に役立つと張り切ったのに、それがかえって自然の破壊に手を貸すことになりかねないといわれては立つ瀬がありません。心したいことです。

コスモス - コピー-縮小.jpg

 

 

次はゆり科の多年草ホトトギスです。花に見られる斑点模様を鳥のホトトギスの胸の模様に見立てて名前がつけられました。今年「さいたまレッドデータブック」で絶滅危惧U類(VU)に指定されました。

ホトトギス-縮小シャープン.jpg

 

 

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レッドデータブックについて

 レッドデータブックとは、絶滅のおそれのある野生生物の情報をとりまとめた本のことで、日本では1989年に日本自然保護協会(NACS-J)と世界自然保護基金日本委員会(WWF)が刊行した「我が国における保護上重要な植物種の現状」いわゆる日本版レッドデータブックが作成され、2000年には環境庁から「維管束植物レッドデータブック」が発行されています。

さらに全国的には絶滅のおそれがないものでも、ある地域では絶滅の危険があるなど地域によって異なるので、各都道府県などがそれぞれの地域のレッドデータブックを作成しています。

 フジバカマについては、全国版では1989年に絶滅危惧種に挙げられ、2000年には絶滅危惧U類(VU)に指定されました。1998年の「さいたまレッドデータブック」では絶滅危惧TB類(EN)に指定されましたがその後各地で自生が確認され2005年版では指定から外されました。全国版では環境省の2007年版で準絶滅危惧(NT)に指定が変更されました。2011年の「さいたまレッドデータブック」では準絶滅危惧(NT)として再び追加指定されています。

 2011年の「さいたまレッドデータブック」では、新たにホトトギスが絶滅危惧U類(VU)に、ウラシマソウが準絶滅危惧(NT)に追加指定されています。

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若本孝雄