臨時のアヤメの仲間特集です

2009.06.21

「いずれあやめかかきつばた」という言葉があります。「どちらもすばらしくて優劣をつけ難い」という意味だそうですが、「区別がつけ難い」の意味にも用いられるようで、私などアヤメもカキツバタもハナショウブもちゃんと区分けして見ていませんでした。今年はすこし意識して勉強しましたので、アヤメの仲間(あやめ科アヤメ属)を特集してご紹介したいと思います。

 

まずアヤメです。外花被片(3枚の大きい花びらのように見える部分)の基部に黄と紫の網目模様があるのでアヤメ(文目)だとする説があります。花も葉もやや小形です。三貫清水の緑地には生えていませんが、近くの畑などに植栽されています。普通アヤメというと紫色の花を思い浮かべますが、写真右のような白花のものも割合たくさんあります。


 

次はカキツバタです。植えられたものかどうか分かりませんが、南池の中で毎年咲きます。池や水路など湿地が一番好きな種類です。カキツバタは外花被片の基部の斑紋が白く、ハナショウブは黄色なので見分けられるとする解説が多いのですが、ここのカキツバタは斑紋が黄色と白です。ハナショウブとは、葉の幅が3センチと広くて平坦なことで見分けられます。


 

次はジャーマンアイリスです。地中海沿岸原産の園芸種ですが、三貫清水の緑地でも野生化して毎年咲いています。緑以外の色は何でもあるといわれるほど多くの品種が作られていて植栽されます。外花被片の基部にひげ状の突起があるのが特徴です。


 

次はダッチアイリスです。球根系のアイリスの代表で、ヨーロッパ原産の園芸種ですが、これも野生化しています。


 

次は今年初めて見かけたもので、三貫清水の原っぱに2株、1週間ほど咲いていました。名前が分からずいろいろ調べていたのですが、どうやらイリス・スプリア・オクロレウカ(別名をチョウダイアイリスというイリス・オクロレウカの小形版)らしいと分かってきました。わざわざ植えられたとは考えにくい場所なので、どうしてここに咲いているのかよく分かりません。


 

次は花の黄色なキショウブです。カキツバタに次いで水湿地が大好きで鴨川の中などにも多く、完全に野生化しています。花が黄色なのはジャーマンアイリスやハナショウブの黄色種以外にはなくて、これはやや小形なのですぐわかります。


 

次はハナショウブです。ノハナショウブから作り出された園芸種で数え切れないほどの品種があるといわれます。写真は市内の染谷はなしょうぶ園で撮影したもので、左側は「赤とんぼ」、右側は「山野辺」と名札がつけられていました。後者は内花被片が外花被片とほぼ同じ大きさに発達して6弁花のように見えるので六英花と呼ばれています。


 

次は三貫清水緑地の道路わきの大型プランターに数株あるうちで1輪だけ6月19日に咲き始めたハナショウブです。内花被片がかなり大きいのでノハナショウブではないと思います。野生化しているとはいえないのですが、最近誰かが植えたものでもありません。


 

次は、鴨川向こうの上尾市内の道路脇の田んぼそばで見かけたもので、花と葉の様子から、ハナショウブの原種であるノハナショウブだと思われるものです。ノハナショウブとハナショウブに共通する特徴は外花被片の基部に黄色の斑紋があることと、葉の中肋が盛り上がっていることです。


 

ほかにアヤメ属にはイチハツがあるのですが、近くに見当たりませんし花の時期も逸したので省略します。また他にシャガなどもありますが、他との区別が容易なので、割愛します。

 

最後に、いろいろ混乱を起こしている、アヤメの仲間とショウブとの関連について触れておきます。万葉集などで「菖蒲」と書いて「アヤメ」と読ませる植物は、今でいう「ショウブ」のことです。端午の節句に「菖蒲湯」に使うショウブで、アヤメの仲間とは全く別物の、さといも科ショウブ属の植物です。あやめ科アヤメ属の花にアヤメという和名をつけ、葉がショウブに似ていて花がきれいな草にハナショウブという和名をつけたのが混乱の始まりです。ハナショウブのお祭りを「アヤメ祭り」といったり、ハナショウブの庭園を「菖蒲園」と略したりすることがそれに輪をかけているのです。ショウブとアヤメの仲間は別物だときちんと認識しておく必要があります。ショウブの花の写真をここに出しておきます。


 

例によって間違いがあるかもしれません。ご意見をお待ちします。

 

若本 孝雄