臨時のスミレ特集です

2009.05.05

スミレの花がほぼ終わりになりました。今年はスミレの仲間に関して新しい、しかも重要な知見が得られました。そこで臨時にスミレについて特集することにしました。

ただしスミレの品種の同定は、全く素人の私にはむずかしい問題で、勝手に品種名を書いてはいますが自信はありません。ご覧の皆様のご意見をくだされば幸いです。

 

スミレ類は、根生葉だけで茎が立たず株元から直接花柄を出すだけの無茎種と、地上に茎を立てて株元と地上茎の両方から花柄を出す有茎種とに大別されます。

 

三貫清水の緑地とその近くで、一番早く咲き始め数も多くポピュラーなのは、なんといってもタチツボスミレでしょう。有茎種の代表といったところです。花色は薄めですが、すっきりした感じです。花弁の内側に毛は生えていません。丸型の葉で、托葉は櫛の歯状に切れ込んでいます。


 

次はツボスミレです。小形の有茎種ですが、白色の花弁の紫色の筋が鮮やかです。ツボというのは庭を意味します。別名はニョイスミレで、ニョイ(如意)とは孫悟空の如意棒のニョイで「思いのまま」という意味です。今年は数が減った気がしますが、上尾側の原っぱにたくさん生えているのを見つけました。


 

次はスミレです。品種名を単にスミレとだけいうのですが、スミレといったとき、この品種をいうのか、スミレ類一般の総称としていっているのか分かりません。それで品種名をいうとき学名の(ビオラ・)マンジュリカと呼ぶことがあります。スミレ色といえば一般的にこの花の濃い紫色をいうほど、最も親しまれている無茎種の代表です。葉はへら形で葉柄に広い翼があります。左右の花弁(側弁)には毛が生えています。


 

次はノジスミレです。写真は白い花ですが、花の色は濃紫色まで変化が多いようです。葉はスミレより短く、葉柄の翼も目立ちません。花弁は普通無毛です。人里周辺にだけ見られるスミレです。1株だけで花期も短く、きちんと花弁の開いた写真が撮れませんでした。


 

次はヒメスミレではないかと思ったままで花が終わってしまった株です。スミレに近い種類だとは思いますが全く自信がありません。葉は三角状で花はスミレに似た濃紫色です。


 

次はヒゴスミレといって、数少ない複葉性のスミレのひとつです。花がないとこれでもスミレかと思われるほど、葉がほぼ完全に5裂しさらに先が細かく裂けます。花弁はきれいな白色です。側弁の基部には毛があります。


 

次の2種は、何年もアカネスミレとマルバスミレかなと思っていたましたが、図鑑の写真よりも距(花弁の一部がうしろに袋状に突き出した部分)が短くて、疑問を持っていたものです。今年、時々覗いているインターネットの画像掲示板「植物園へようこそ」に投稿して伺ったところ、2種とも北アメリカ原産のビオラ・ソロリア(別名アメリカスミレサイシン)という帰化種だそうでした。性質が強く種子がたくさん飛ぶので、近年猛烈に増えていると聞きました。驚くと同時に少々がっかりしました。

一時セイヨウタンポポがニホンタンポポを駆逐するとして、「タンポポ戦争」などといわれて話題になりましたが、スミレの世界ではそれ以上の問題が起きているのではないかという気がしました。

 

さてそのひとつ、次はアカネスミレだろうと思っていたものですが、ビオラ・ソロリアのパピリオナケアです。丸葉で濃紫色の花弁です。根元がワサビのように太くなって次々に増えていくそうで、そういえばここ2年ほどでずいぶん株が増えたような気がします。花期が終わったら急に葉が大きくなってきました。


 

もうひとつ、次はマルバスミレだと思っていたもので、ビオラ・ソロリアの流通名スノープリンセスという帰化種で、もともと園芸品が逸出したものだそうです。三貫清水では数年前から広場の一角で見られていましたが、今年鴨川向こうの上尾の原っぱにたくさん咲いているのを見つけました。


 

スミレに関連して、帰化植物の問題もさることながら、園芸植物が野に逸出することも、たいへん大きい問題ではないかと最近思っています。

若本 孝雄