― 日本の里100選・・・Pa r t V―

(2009年2月10日付け朝日新聞朝刊より転記)

 

美しい景観後世に

      県内から2カ所選定

 

「にほんの里100選」(朝日新聞社、森林文化協会共催)に県内から「三富新田」(所沢市・三芳町と「風布」(寄居町)が選ばれた。暮らしのなかで育まれてきたすこやかな里の様子を紹介する。

 

 

三富新田(所沢市・三芳町)

短冊型に「地割り」

屋敷、畑、平地林が並ぶ敷地が細長く区画され

た三富新田―所沢市中富、本社ヘリから、林敏行撮影

 

「三富新田」の「三富」とは上富、中富、下富の3地区を指す。約300年前の江戸時代、川越藩主の柳沢吉保が行った新田開発で誕生した。 県指定文化財でもある「地割り」と呼ばれる短冊型の区画が特徴で、幅約72メートル、長さ約675メートルに、屋敷と耕地、平地林が整然と連なっている。地域ではホウレンソウやダイコンなどの野菜栽培が盛んだ。

 平地林は、かっては薪や肥料にする落ち葉を確保する役割を持っていた。近年、その環境にやさしい循環型農業が注目され、農家や住民、ボランテイアらが落ち葉掃きや林の管理をして、景観と文化を守り育てている。

地元の「さんとめねっと(三富地域ネットワーク)」に登録するボランテイアは約800人にも上る。運営する三富地域農業振興協議会の斉藤満会長は「これからも四季折々すばらしい景色を見せてくれる三富新田を、みんなの協力をいただいて永遠に残していきたい」と話す。

 

 

風布(寄居町)

名水の保全に力

丘陵地ではミカン栽培が400年以上続いたことが

受賞につながった―寄居町風布、大山利雄さん撮影

 

 皆野寄居バイパスの寄居風布インターを下りると、傾斜地に植えられたスギやヒノキを冬の日差しが照らしていた。400年を超える、温暖な気候を利用したミカン栽培や名水もあり、観光客でにぎわう場所だ。

85年に環境庁(当時)の名水百選に「風布川・日本水」が選ばれた。その後、自然石を活用した川の保全砂防事業や、ホタルや沢ガニが生息できる環境整備も進められている。ロウバイやカタクリの里づくりで、四季折々の花も楽しめる。

地元では、年に2回の風布川沿いの草刈のほか、4月から年末にかけてのゴミ拾いなど、水の環境保全には特に注意を払っているという。

「日本の里風布館」の坂本全平館長(80)は「里と一緒に生きていると気づかないことがあるが、認めてもらったことを地域をあげて喜んでいる。過疎が進み人口減少が心配だが年間を通して楽しめるものをつくりたい」と話している。