日本の里100選・・・PartU

(2009年1月6日付け朝日新聞朝刊より転記)


選ばれた里の特徴は 山間の田園風景、多数 / 様々な集落様式

 

100選の里は、わずか数軒の集落から、220平方キロに約7千軒がある富山県砥波平野の散居村まで、大小さまざまだ。ただ、景観面では水田が評価された里が圧倒的に多い。特に棚田は選から漏れたものを含めて応募が多く、山あいの稲作風景が里山のイメージと結びついていることがうかがえる。逆に湿地や湧水、草地があまり見られず、希少数が反映されている。

集落が評価された里も多いが、その様式は多彩だ。簡素な印象の関東、雪国の豪壮な家並み、赤い石州瓦など、それぞれに独自の建築文化を伝えている。急傾斜地の棚田や住居に見られる石垣にも、使う石や積み方に、その土地ならではの文化が息づく。

一方、身近な生き物との共存をめざす里が多いのも100選の里の特徴だ。農薬を減らしたり、耕作を減らしたり、耕作を放棄された水田や谷あいを生き物のために再生したりする取り組みが各地に見られる。

全国の里では深刻な過疎化と高齢化が進んでいる。候補地を歩いた現地調査員たちも「人を見かけることはまれだった」と驚く。そんな中にあって100選の里は、「里の営みを持続させようと努力を続ける元気な里」であるといえる。調査員たちによると、いずれの里にも共通しているのは活動の中心となるリーダーがいるということだという。

        選考方法

対象とした里は、集落とその周辺の田畑や草地、海辺や水辺、里山などの自然からなる地域。広さにかかわらず、人の営みがつくった景観が人まとまりになった地域を一つの里ととらえた。08年1〜3月に候補地を募集。4474件の応募があり、候補地は2千地点以上に達した。

 応募者の推薦の言葉や現地に詳しい研究者、NPO、自治体関係者などの意見を参考に、朝日新聞社と森林文化協会が候補地を約400地点に絞り込んだ。そのうえで「景観」「生物多様性」「人の営み」を基準に現地を調査、集落や水田など、里を構成する12の要素ごとに利用や管理の仕方などを評価した、

 調査後、約150地点のデータを選定委員会に提出。11月の選定委員会で論議し「100選」を決めた。