湧水保全地区 三貫清水緑地の自然 ア・ラ・カ・ル・ト
2007年3月2日


 1.名は体を表わす / 二人の登山家

 前回の「はじめに」で国立那須甲子少年自然の家(現在は独立行政法人)について、少しばかり書いたが、今回は、そのパートUとして、勤務していた当時にお世話になった二人の登山家に登場していただこう。

 少年自然の家の主催事業に「那須甲子少年自然の家学生ボランティアリーダー宿泊研修(3泊4日)」があった。これは大学生を対象にした事業。少年自然の家の活動を側面から支えるボランティアを養成するための講座で、毎年6月中旬に開催される。

 野外活動の実際を通してボランティアリーダーを養成するのであるが、この講座を修了しないと、那須甲子少年自然の家でのボランティア活動に参加できない仕組みになっていた。
 その研修の中核に位置づけられていたのが、「那須・赤面山(あかづらやま)縦走」登山であった。その実習で講師に依頼していた二人が、那須山岳会会長の大高登氏と白河山岳会会長の溝井力男氏。

 【大高登】氏は、那須大丸温泉で、民宿「おおたか」を経営している山男である。以前、NHKラジオ第1の朝の番組「おはよう日本列島(現・おはようあさいちばん)」の『列島あさいちさん』のコーナーでレポーターを務めたことがある。
 毎年、那須岳の山開きには必ず登場して登山の専門家としての経験を生かした楽しく、ためになる話を披露してくれたものです。大きな志を抱いて、高い山を目指して一生懸命にチャレンジしていく登山家である。

 続いて、二人目の【溝井力男】氏ですが、当時は、福島県白河市の白河中央中学校の社会科の先生でした。ヒマラヤ山脈の7900m級の峰を踏破した経歴の持ち主である。
 溝井の溝は、氷雪の雪原のクレバスだ。そこには水が溜まっている所もある。頂上を目指し、より安全なルートを選択しながら黙々と力を振り絞り、果敢に挑戦していくという男らしい、ダイナミックな名前である。

 このように二人とも、正に登山家になるために、この世に生を受けたといっても過言ではない。

 最後に、参考までに、当時の実習の登山ルートを掲げておこう。

那須温泉 → 峠の茶屋 → 那須岳(茶臼岳)1915m →
剣が峰1799m → 朝日岳1896m → 三本槍岳1916.9m
→ 前山1702m → 赤面岳1700.1m → 自然の家  




 2.雪は空からの手紙である / 物理学博士・中谷宇一郎

 『雪は空からの手紙である』と言ったのは、物理学者の中谷宇一郎(1900〜1962年)である。著書に『冬の華』『科学の方法』などがある。暖冬で雪不足が報じられているが、何とロマンに満ちた美しい言葉であろう。

 さて、彼は『雪雑記』の中で、次のように述べている。

 ≪文明人の盲点≫
 「『コンティキ漂流記』の著者は、まことに巧いことを言っている。古代インカ帝国の住民が使っていたのと全く同じ筏を造って、この若い冒険家は、南米からタヒチ島の近くまで、自分で漂流してみたのである。そして南太平洋の真ん中で、いろいろ不思議な生物に遭遇している。
 近代の文明は、大きいそして強力な汽船を造って、即ち科学の大きな力を利用して、七洋を隈なく調べつくしているが、ただ一つ大切なことを忘れている。それは、そういう立派な汽船は、船体も大きく、またスクリューの音も大きいということである。近代の探検船では遭遇しなかった怪物を、筏の漂流者が目撃することはあっても、別に不思議ではない。海面すれすれのところに、じっと座り込んで、2カ月以上も潮流と風だけに送られて、あの広大な太平洋の真ん中を漂ってみた人は他にはいない。そういう人間だけにその姿を見せる怪異な生物がいたとしても、別に不思議ではない。この漂流者は、若い考古学者であって、小説家ではない。しかも、この冒険は、今度の大戦後に行われたごく最近の話である。
 海はあまりにも広く、船が通るところは、その極めて僅かな部分にすぎない。しかも、われわれの知識は、海面からごく近いところの水中だけに限られている。深海探測といっても、調べ得るところは、海の面積からみたら問題にならない。大洋のただ中、その深所には、何が棲んでいるか、人間の想像の及ぶところではない」




3.雪と氷 二題

 【その1】日本で初めてのスキー(明治44年/1911年)

 上越市は豪雪地として名高い。また雁木(がんぎ)--雪国で、長いひさしの下の通路--とスキー発祥の地として知られている。
 わが国でのスキーの始まりは、新潟県の高田連隊で、オーストリアの軍人レヒル少佐が、明治44年1月12日、連隊の兵士たちに教えたときであるという。
 北海道でも、ほとんど同じ頃、札幌農学校の教師ハンス・コーラーがノルウェー式のスキーを取り寄せて学生たちに教えている。

 【その2】南極大陸にちなんだ話

 @アムンゼン、南極点に達す(明治44年/1911年)
 ノルウェーの探検家アムンゼンは、12月14日に南極点に到達し、国旗を掲げた。先着を激しく争っていたイギリスのスコット隊に先んじること1カ月余りであった。

 A白瀬中尉、南極点に日の丸を揚ぐ(明治45年/1912年)
 白瀬矗(のぶ)中尉は千島探検なども行った明治の探検家。1910年(明治43年)、開南丸を指揮して南極に向かい、1912年、南極大陸の南緯80度付近に達した。ここを大和雪原と命名して、日本領であることを宣言した。さらに極点に向かったが、装備の不完全と食糧不足のため失敗した。

 B南極観測隊オングル島へ上陸(昭和32年/1957年)
 白瀬中尉は、明治45年1月28日に南極に日の丸を掲げたが、その1日違いの1月29日、永田隊長率いる日本南極観測隊はオングル島に到着し、日章旗を掲げ、ここを昭和基地と名づけた。

 Cタロ、ジロを発見
 昭和34年(1959年)1月14日、南極観測船「宗谷」は、昭和基地において、前年連れて帰れなかった犬の中で、タロ、ジロの生存を確認した。その生命力の強じんさに人々は驚いた。





4.ラジオ深夜便 / 誕生日の花と短歌


 NHKのラジオ番組「ラジオ深夜便」を本格的に聴き始めたのは、退職した平成14年4月からである。
 朝の4時50分頃から、今日の「誕生日の花と花ことば」のコーナーがある。草花が好きな私にはぴったりだ。それぞれの個性あるアンカーの解説で毎朝楽しく聴いている。以前には、それに加えて、「誕生日の花と花ことば」に因んだ「誕生日の花と短歌」ということで、歌人・鳥海昭子氏の短歌が毎日放送された。氏は2005年10月9日に急逝。享年75歳。

 鳥海昭子(とりのうみ・あきこ)氏は、本名・中込昭子。1929年(昭和4年)、山形県生まれ。國學院大學文学部卒業後、児童養護施設の職員となる。1985年(昭和60年)、歌集『花いちもんめ』で第29回現代歌人協会賞受賞。親しみやすい口語的な表現と自由韻律で、人間への深い愛情を詩情豊かにうたい注目される。
 『どっぴん語り』『ででっぽの花かたんこの花』『逆立舞』などの歌集のほかに、『種をにぎる子供たち』『あしたの陽の出』『語り部歌人・鳥海昭子のほんのり入院記』などエッセーも多数。

 平成17年4月から、「『誕生日の花と花ことば』にちなんだ短歌」の放送が始まった。まもなく、多くのリスナーから、「1日の始まりがとても豊かになりました」「短歌を書き留めると、不思議に温かい気持ちになれます」「『誕生日の花』が新たな光を放ちました」といった歓迎の声が着々と届き始めたそうです。さらに出版を望む声が日に日に高まり、平成17年12月17日に発刊されました。ご本人はその本を見ないで旅立たれたのです。

 続いて、柳宗民氏、園芸研究家、1929年、京都生まれ、に登場していただこう。氏は、民芸運動の創始者・柳宗悦の3男。栃木県農業試験場助手、東京農業大学研究所を経て、柳育種園を経営するかたわら、執筆や<NHK趣味の園芸>など、テレビやラジオの講師としても活躍。著書に『柳宗民・雑草ノオト』『山野草』など多数。園芸文化協会評議員。母は声楽家・兼子氏。長兄は工業デザイナーの柳宗理氏、次兄は美術史家・宗玄氏。

 1994年、「誕生日の花」の監修をNHKラジオセンターから依頼を受け、園芸研究家の鳥居恒夫氏とともに苦労して取り組み、花ことばもつけられ、カレンダーにもなった大好評のコーナー。誕生日の花と花ことばが『誕生日の花と短歌365日』とドッキングして1冊の本となって、NHKサービスセンターから発刊されている。

 柳宗民氏は2006年2月21日に死去。ラジオ深夜便に深いかかわりのあるお二人のご冥福をお祈りいたします。




5.趣味の園芸 / 松田輝雄氏、須磨佳津江氏


 昭和62年頃、私は趣味の1つである花木を育てることに力を入れていた。当時のNHK教育テレビ番組「趣味の園芸」を、テキストを購入して毎週視聴していた。その当時の司会者の松田輝雄氏と須磨佳津江氏が、それぞれNHKFM「バロックの森」のパーソナリティーと、NHK第1ラジオ番組「ラジオ深夜便」のアンカーとして活躍している。

 まず、バロックの森であるが、オープニングの曲はヘンデルの合奏協奏曲。朝の6:00〜6:55の放送であるが、私は毎日、曲を聴きながら、解説をメモし、それを就寝前にノートに記録(清書)している。音楽中辞典を買って、作曲者や音楽用語でわからない内容が出てきた時には調べて、メモしておくようにしている。
 2003年(平成15年)から始めたそのノートが、2006年8月23日に1000ページを突破し、2007年2月28日現在で1175ページになっている。

 お陰で、ルネサンス、バロック期の音楽も、教会音楽、宮廷音楽、世俗音楽と、少しずつ理解が深まってきた。もともとクラシック音楽が趣味であったが、学生時代からレコードで古典派からのジャンルだけを聴いてきたので、退職を契機に、それ以前のバロック音楽に焦点を当ててじっくり聴いてみることにし、朝6:00から6:55の時間帯を毎日それに当てているのである。
 CDプレーヤーとNHKFMを中心にバロック音楽を楽しんでいることをつけ加えておこう。

 さて、松田輝雄氏は1週間のうち、土曜日・日曜日のパーソナリティーを担当する。この日は、リスナーからのリクエストを中心に、番組が構成されていてなかなか面白い。松田氏は、始めや、曲と曲の合間に植物や鳥のことなど、豊富な経験の中から光る言葉で巧みに曲をつないでいくので、毎週興味深く聴いている。

 続いて、「ラジオ深夜便」のアンカーの須磨佳津江氏。須磨氏は1949年(昭和24年)生まれ。1972年、NHKに入局。<スタジオ102>などを担当。退職後、フリーになり、<趣味の園芸>や<テレマップ>など多数出演。ラジオ深夜便は奇数週の火曜日担当である。聡明で丁寧な語り口でリスナーに好評。特に「誕生日の花と花ことば」の解説は昔取った杵柄で天下一品。

 このように、以前のテレビやラジオを視聴していた頃のアナウンサーが、また現在の番組で活躍していると、豊かな気持ちになれるので有難いものだ。




6.キタミソウの保護へ培養 / 杉戸農業高校生の取り組み


 前回の鴨川の水質検査のコーナー/水環境ネットワーク関係の自然観察で、キタミソウの自生地のことを書いたが、2月22日の朝日新聞に標記の記事が載っていたので紹介する。

 杉戸農業高校(杉戸町)の生徒が、絶滅が心配されるキタミソウの保護のため、培養に取り組んでいる。県に届け出て、昨年秋に越谷市で株を採取し、無菌のビンの中で増やしている。
 キタミソウはシベリアなど亜寒帯を中心に分布し、国内では県内や北海道、熊本などで見られる。葉の長さは2〜5センチ。花は2〜8ミリと小さい。生物生産工学科3年の大島梢さん(18)と高橋未央子さん(18)が越谷市で散歩中にキタミソウに気づき、保護活動を思い立った。
 現在は培養室に並べたビンで増やしているが、将来的には外に移し、栽培方法を研究する予定。




7.鴨川の水質検査 パートU


(1)検査項目についての補足

【使用器具】
 (株)共立理化学研究所の水質分析器具「パックテスト」
【検査項目】
@pH(水素イオン濃度)
 水が酸性かアルカリ性かを示す。pH6.7〜7.7が生物の生息に適す(水道水は6.5〜8.5)。
ACOD(化学的酸素消費量)
 水の汚れ具合を示す代表的な指標。数値が0に近いほど良好。数値が大きくなるほど、汚濁が進む。10までが魚(コイ、フナ、ナマズ)の生息する限界。
BNH4(アンモニウム)
 動植物の腐敗物や排せつ物(し尿)などによる汚染度を示す指標。生活排水や工場排水などが流入すると、数値が高くなる。雨水は0.1〜0.4。10は汚染がかなり進んでいる。
CPO4(りん酸)
 洗剤や肥料などが流れ込むと、数値が高くなる。
DNO2(亜硝酸)
 主に、し尿や食物の酸化によって生じる。水質汚濁指数としてはNH4より優れているといわれる。
【検査方法】
 鴨川の2カ所(中橋、山の下橋)と、三貫清水の北池、南池から水を採取し、上記「パックテスト」で測定。
【検査担当】
 外山実、島村道宏


(2)データ
<調査地点@ 中橋>
日時 天候 気温 水温 COD PO4 NH4 NO2 pH
H17.04.17
10:30
22 13 0.3 0.5 0.5 8.5
H17.07.16
10:55
29 24 0.5 0.7 0.5
H17.10.29
10:15
17 12 0.5 0.5 0.5
H18.01.22
14:45
0.4 0.5 0.5
H18.04.15
11:05
晴・曇 11 13 0.05 0.8 0.1
H18.07.15
10:00
34 25 0.7 0.5
H18.10.21
10:10
19 19 0.05 0.75 0.75 7.5
H19.01.27
10:10
10 7.5 0.05 0.75 0.15 7.5

<調査地点A 山の下橋>
日時 天候 気温 水温 COD PO4 NH4 NO2 pH
H17.04.17
 
22 16 0.7 1.6 0.3
H17.07.16
10:25
29 22 0.05 0.2 0.5
H17.10.29
08:50
16 14 0.5 0.5 0.5
H18.01.22
14:00
0.05 0.7 0.05 7.5
H18.04.15
10:20
晴・曇 13 0.75 0.75 0.15
H18.07.15
10:17
34 25 0.7 0.2
H18.10.21
10:25
23 19 0.5 0.75 0.5
H19.01.27
10:30
12 0.05 0.75 0.2 7.5

<調査地点B 北池>
日時 天候 気温 水温 COD PO4 NH4 NO2 pH
H17.04.17
10:20
14 12 0.05 0.2 0.05 6.5
H17.07.16
11:15
26 22 0.05 0.2 0.02 7.5
H17.10.29
10:50
17 11 0.05 0.2 0.1
H18.01.22
15:15
0.05 0.2 0.02 7.5
H18.04.15
11:30
晴・曇 13 12 ----- 0.4 0.02 8.5
H18.07.15
10:40
26 23 0.1 0.5 0.05
H18.10.21
10:50
18 12 0.1 0.2 0.02
H19.01.27
10:45
----- 0.2 0.02

<調査地点C 南池>
日時 天候 気温 水温 COD PO4 NH4 NO2 pH
H17.04.17
10:00
10 0.05 0.6 0.03 7.5
H17.07.16
11:05
25 19 0.05 0.5 0.03
H17.10.29
10:35
16 12 0.4 0.05 6.5
H18.01.22
15:00
0.05 0.5 0.02
H18.04.15
11:15
晴・曇 13 13 0.05 0.4 0.02
H18.07.15
10:30
30 21 0.05 0.5 0.05 5.5
H18.10.21
10:40
18 12 0.05 0.4 0.05
H19.01.27
 
11 12 ----- 0.4 0.05



島村道宏