湧水保全地区 三貫清水緑地の自然 ア・ラ・カ・ル・ト
2007年2月11日


 1.はじめに

 私は昭和57年4月から60年3月までの3年間、「国立那須甲子少年自然の家」(福島県西白河郡西郷村)で事業課専門職員として勤務した。仕事に携わる中で「自然とは何か」について自分なりのコンセプト即ち「自然観」を持つ必要に迫られた。
 その時に出合った一冊の本が、水の研究家として全国的に有名な富山和子氏の「水と緑と土」である。この本は、1973年12月に出版されたものである。この自然観は私に大きなインパクトを与えた。以後、私の自然観は富山和子氏のコンセプトそのものであり、その受け売りがずーっと続いている。





 2.自然とは何か/水と緑と土

 富山氏はその著書の序章「自然観の断絶」の中で次のように述べている。『アメリカの社会学者フローレンス・クラックホーンは、ヨーロッパの文化が「人間は自然を征服すべきもの」としてはぐくまれたのに対し、「人間は自然に屈服すべきもの」としてはぐくまれた文化をメキシコの農民文化に求め、両者の中間的な存在すなわち、自然と人間との調和に築かれた文化として日本の文化を位置づけている』。

 しかし、それが機能しなくなったと述べている。当面する問題−−都市の緑の後退、水不足、災害、危機に瀕した農業や林業、汚染、山の破壊など、資源、環境、災害からアプローチしても、それを解く鍵は水のとらえ方であり、川とのかかわり方の問題であるということで、水が最初に来るのである。(略)

 自然の要素は「水」と「緑」と「土」である。具体的には、
「水」……川、湖、沼そして水の張られた田んぼなどである。広くいえば海もそうである。
「緑」……森林、里山の木草、野原の草花、庭の木々や草花など。
「土」……土壌のことで、森林や里山や野原の土、田畑や庭の土など。

 1つ1つの要素は、単独で機能するのではなく、複雑に補い合っているのが特徴である。また、広く解釈すると、人間も含めて、そこに棲む動物も入るであろう。

 そうした観点から「三貫清水緑地」の自然環境を見てみよう。自然林としての里山(緑)、鴨川(水)、そして里山の周りや中を流れる小川(水)、そして北側に位置する池(水)と南池(水)、雨水遊水池を兼ねた田んぼ(水・緑・土)、そしていくつかの野原(緑・土)。総合的にみて、かなり恵まれているといえよう。(1つ1つをみると、汚れや水量そして管理の面から問題もあるが)

 さいたま市立舘岩少年自然の家の創設者である元大宮市長の故馬橋隆二氏が詠んだ短歌がある。「山に問え 川と語らい 野に歌え 自然の家に 集う子ども等」。この歌は、富山和子氏の「水と緑と土」と見事に一致する。また、舘岩少年自然の家の駐車場から本館へ向かう広場の角の黒御影石に刻まれており、入所する人々を絶えず見守っている。





3.鴨川の水質検査

 「三貫清水の会」では専任の係を置いて、年4回(1月、4月、7月、10月)の水質検査を実施している。また、他団体の行事にも参加し、交流を深めている。

(1)水質測定地点(さいたま市北区奈良町)
 @中橋   北緯35度56分48秒・東経139度35分50秒
 A山の下橋 北緯35度56分29秒・東経139度35分58秒
 B南池   北緯35度56分29秒・東経139度36分03秒
 C北池   北緯35度56分33秒・東経139度36分02秒

(2)水質調査項目
 @気温A水温B天候C採水月日時刻D試水水温(測定時)ECODFpHGアンモニア態窒素H亜硝酸窒素Iリン酸態窒素

(3)身近な水環境全国一斉調査に協力/2005年10月と2006年10月

(4)さいたま市水環境ネットワーク協議会に加入している。
 @2006年10月8日/さいたま市水環境ネットワーク交流会(企画/NPO自然観察さいたまフレンド)に参加し「芝川低地の水環境調査」を行う。
 A2006年11月4日/さいたま市水環境ネットワーク視察研修会に参加
  ・さいたま水族館(羽生市)
  ・ムサシトミヨ生息地(熊谷市)
  ・さきたま古墳公園(行田市/昼食)
  ・元荒川水環境センター(桶川市)
  ・葛西用水キタミソウ自生地自然観察(越谷市)




4.富弘美術館/空のへや

 三貫清水の里山は今の季節、草木の変化が乏しいので、昨年11月に見学してきた「群馬県みどり市(大間々町、東村、笠懸村の1町2村による合併)にある富弘美術館」について述べてみよう。

 平成18年、みどり市立としてリニューアルオープンした。展示にも工夫を凝らし、新しい美術館としての機能を備え、充実している。円形の展示室には、心をほぐす作品が、やさしい光の中でひときわ輝き、なごみを与える。

 不慮の事故での長い入院生活から、ふるさとに帰った星野氏を迎えたのは、子どもの頃から慣れ親しんだ四季折々の野の草花や澄んだ青い空、清く流れる川と山々に囲まれた故郷の自然だった。
 星野氏の作品は歳月を経て、訪れた人々に生きる勇気や喜びを与えている。車椅子を押してもらいながら食い入るように作品と対峙する人の姿が胸を打つ。

 さて、展示室の隣に「空のへや」と名付けられた中庭がある。そこには富弘さんの詩画に登場する草花が植えられて鑑賞できるようになっている。
 @エビネランAコゴミBサクラソウCシュウメイギクDスズランEタカハススキFチョウセンノギクGツワブキHナンバンギセルIヒマラヤユキノシタJミヤコワスレKワスレナグサ etc.

 富弘美術館を訪れた際には是非足を運びたいコーナーである。


島村道宏