赤い色で身を守る------アカメガシワ


 早春の林の中で、アカメガシワの赤い若葉が目を引きます。

 アカメガシワという名前は、若葉(=新芽)が鮮やかな赤い色になることから付いたものですが、赤い色をしているのには理由があります。実は、この赤い色は身を守る手段なのです。

 若葉が赤く見えるのは、表面に細くて赤い毛がびっしり生えているためです。下の写真のように、ティッシュペーパーなどでこすると、赤い色(赤い毛)が取れて、葉の緑が出てきます。


 柔らかい若葉は、葉を食べる虫など外敵に狙われるので、身を守るために、葉の表面を赤い毛が覆っているわけです。若葉が生長して、固く大きくなると、外敵に狙われにくくなるので、赤い毛は徐々に抜け落ちて、葉は緑色になっていきます。

 また、この赤い毛は、太陽光の赤色領域と近赤外領域を強く反射して、若葉の過熱を防ぐ効果もあるそうです。さらに、赤い毛は、葉の光合成作用に必要な光はちゃんと通しているといいます。うまくできているもんですね。

 ところで、アカメガシワはこのほかにも、外敵から身を守る手段を持っています。

 それは、葉の付け根にある蜜腺(みつせん)です。ここから出る蜜に、アリが集まってきます。アリは集まってきたついでに、蛾(ガ)などが葉に産み付けた卵や、孵化したばかりの毛虫などを餌として持ち帰ります。つまり、アリはアカメガシワの外敵を退治してくれるわけです。

 アリを蜜で集めて、葉をパトロールさせるなんて、アカメガシワは何と頭がいいんでしょうか。

 植物も生き残る(身を守る)ために、いろいろな工夫をしているわけです。

松井修一