セミの抜け殻を見つけるなら桜の木

 ♪ ウワミズザクラの枝にセミの抜け殻が何個も付いていました。セミは幼虫も成虫も木の樹液を吸って生きていますが、セミにも好き嫌いがあるようで、桜やナナカマドなどバラ科の木を好むようです。こうした木には、セミの抜け殻がたくさん付いていることがよくあります。
 ♪ もう10年以上前の話になりますが、セミを捕って家に持ち帰り、それを近所の小学生の男の子にあげようとしたら、こわがって受け取りませんでした。セミ捕りをしたことがないし、セミをさわったこともない子どもが増えているんですね。
 ♪ ところで、「セミは暗い土の中で6年も7年も暮らし、やっと、明るい地上に出て来ても、たった2週間ほどの短い命だから、かわいそう!」という話をよく聞きます。しかし、それは人間の価値観で「セミの人生(?)」を判断するからであって、セミにとっては余計な同情かもしれません。
 地上で暮らすのはたった2週間ですが、セミが地上に出て来るのは、交尾して子孫を残すため。その使命を終えれば、セミとして悔いなく天寿をまっとうしたことになります。
 ♪ 土の中で、セミの幼虫は木の根っこから樹液を吸って暮らします。「あっちの木の方がいいや」などと言って、地中を移動することはまずないそうです。
 樹液をたっぷり吸える根っこを見つけたら、後はしめたもの。そこにずっとくっついて、樹液を吸い続けます。まー、いわば、運動もせずに毎日毎日、「食っちゃ寝、食っちゃ寝」の極楽生活。土の中なら外敵に襲われる心配もほとんどありません。
 ♪ それに比べ、地上での生活は超多忙です。まず、全力を振り絞って羽化(脱皮)をして、オスはメスを呼び寄せるため昼も夜も鳴き続け、交尾します。さらにメスは数日後、木の枯れ枝や樹皮に産卵します。
 これだけの大仕事を2週間の間にやらなければならないわけですから、セミは「土の中で、もっとゆっくりしていたかったよ」と言っているかもしれません。
 ♪ 木の枯れ枝や樹皮に産み付けられた卵は、その年の秋か翌年の初夏に孵化(ふか)して、幼虫が誕生します。幼虫は木の幹を伝って、すぐさま地中に潜り、木の根に取りつきます。
 数年後の夏の夕方、幼虫は地中から出てきて木に登り、脱皮して成虫になる(羽化する)というわけです。