生きる化石 テングチョウ

 

8月24日(日)午前11時、三貫清水でテングチョウの姿を見ました。この数年、以前ほど蝶に注意をはらっていなかったせいもありますが、数年ぶりの遭遇。小泉総理ではないが「感動した!」。写真のとおり撮影にも成功。

名前の由来は突き出た頭の部分。写真のように頭の先が天狗の鼻のように尖っている。これは“下唇ひげ”と呼ばれる毛の束が伸びているもので、鼻ではありません。

図鑑の解説では東北、北海道は少ないが他では広く分布するとありますが、数は少ない。以前いた旧浦和市では、仲間3,4人と現在の見沼区のあたりまで足を運んで毎日のように蝶を採集をしていましたが、誰もこの蝶は取ることが出来ませんでした。通っていた小学校でも趣味を同じくする連中との情報網がありましたが、そこでもこれを採集という快挙は入ってこなかったので、浦和では少ないようです(埼玉の昆虫愛好家のホームページには採集記録がありますが)。仲間の一人が長野県でこれを捕ってきて自慢していました。

ところが!大宮に移り、中学を卒業、高校が始まる前の春休み中、この蝶を採集したのです。場所は宮前町の氷川神社の近く。テングチョウは成虫で越冬するので、冬を乗り越えた羽はきれいではありませんでしたが、現在でも標本は大切に保管しています。その後、高校に入ってから、クラブ活動の仲間に(余談ですが、クラブは昆虫とは関係ない器械体操部。生物部もあったが何故か入る気がしなかった)やはり少年時代昆虫採集に明け暮れた者がおり、彼は大宮出身でしたが、大宮の某所(三貫清水ではない)にはテングチョウがいるといっていました。はっきりした生態調査結果はないようですが、かなり局地的に生息していると思われます。

また、この蝶は化石ではよく見つかっている、「tengucho」です。アメリカの第三紀層の中から、この蝶の仲間の化石が二種類も発見されています。

また、分類上はテングチョウ科になりますが、我国ではこの蝶だけ。すなわち一科一種。世界中あわせても10種位しか仲間のいない極めて貴重な「科」なのです。しかも、どの学者も独立した「科」だと認めている特異なグループです。こんな歴史的を刻む蝶が三貫清水にはいるのです。やはり三貫清水の森は、残さねばならない貴重な場所なのです。

 

2003/8/25 馬場一秋