秋には変身 キタテハ

    

羽の表         羽の裏

キタテハはタテハチョウ科の蝶。三貫清水だけでなく日進駅の周辺でも見ることができる、なじみの深い蝶です。数も昔と比べて減っていないと思われます。

この蝶は夏型と秋型があって秋になると「変身」します。9月上旬までは写真に示した夏型で羽の表裏とも黄色です。秋型になると表はオレンジ色に近く、裏は茶色っぽい色になり、羽のギザギザが深くなります。私は秋型のほうが美しいとおもいます。季節感を感じるいろいろな指標がありますが、私はキタテハの秋型を見ると「本格的な秋になったな」と思います。

蝶には季節によって模様や大きさが変わるものがあります。春型と夏型があるものと、夏型と秋型があるものに分けられますが、キチョウのように春、夏、秋と3回お色直しするものもいます。暖かい台湾にいるキチョウの仲間には冬型があるのもいます。

春・夏型があるのはアゲハチョウ、クロアゲハなどアゲハチョウ科の蝶や、ゴマダラチョウ、ベニシジミ、トラフシジミなど結構います。ところがキタテハ以外に夏・秋型があるのはと調べると、市街地でも見かけるのはウラギンシジミ、ルリタテハなどがいますが、あまり多くないようです。

何故このように季節によって模様や大きさが変わるのか? 漠然と気温の影響と思われていましたが、実は「日照時間」に鍵がありました。キタテハを使った実験データがありますが、幼虫で過ごす期間の日照時間が13時間以上では夏型、13時間以下では秋型となったそうです。ぴたり13時間では夏型と秋型が半分ずつとなり、中間型というのはありません。13時間がターニングポイントですが、細かく実験した結果、幼虫で過ごす期間の最後の数日が影響することがわかりました。

夏型と秋型は模様が変わるだけでなく、産卵の時期など行動も変わります。僅かな日照時間の差によって、全く別の生き物になってしまう、大自然のなせる技はやはり「神秘」としかいいようがないですね。秋型は標本がないので、採集したらまたリポートします。

2003/8/30 馬場一秋