クロシジミよ 君も帰ってきてくれ!

 

私の趣味は昆虫採集。蝶々を中心に50歳を越えた今でも続けています。三貫清水の蝶について話すなら、一番にあげなければならないのがクロシジミです。

中学のとき浦和から現在居る日進町に引っ越してきましたが、ある日大宮北高の近くに大きな森を発見、これは何かいるかも知れないと足を踏み入れました。うっそうと茂る木、こういうところにはシジミチョウの中でも大きくて美しいミドリシジミとかアカシジミという種類がいます。森に入り込むと周りが見えず、深い山に来たような感じになるので、それも気に入ってそれから足繁くこの森に通うようになりました。それが私の三貫清水(そう言われているのは知らなかった)との出会いでした。

中学2年の時、いつものようにその森で採集をしていると、現在の北池近くでそれまで見たことのないやや大型のシジミチョウの仲間らしい蝶が飛んでいる姿を目撃。長年の経験で飛んでいるところを見れば大体どんな蝶か分かるのですが、それは初めてみる姿でした。こういう時の胸の高鳴りが昆虫採集の醍醐味です。息を潜めて待つこと何分だったかは忘れましたが、それが補虫網の届く木の枝に静止。捕らえてみるとやはり大型のシジミチョウ。それがクロシジミだったのです。

この蝶は、幼虫時代をクロオオアリという蟻の巣の中で過ごすという変わった習性を持っています。幼虫は蟻からえさをもらい、蟻は幼虫の体から出る甘い汁をなめる(多分甘いと思うが私はなめたことない)という共生関係です。羽化する時は羽が広がる前に巣から出てくるのですが、失敗して出られなくなる奴がいないのかなと心配になります。

このクロシジミの姿をこの30年間見かけなくなってしまいました。環境省のレッドデータブックでは、絶滅の危機に瀕している種『絶滅危惧T類』に挙げられています。何とかホタルのように戻ってきてほしいと思っています。写真は昭和44年7月に採集したもの。メスです。

2003/8/15 馬場一秋