晩夏 セミの四重奏  

 


 節電の夏も何とか最後の日曜日を迎えました。尤も9月に入ってからがクセモノで、お彼岸まではまだまだ暑い日が結構あると思われますが。
 今の三貫清水の森で一番元気なのはセミたち。あまり鮮明ではないですが、写真が取れましたので報告をいたします。今いるのは4種類。最初に出てくるニイニイゼミはもういないようですが、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクホウシの四重奏を聴くことができます。
 写真左はミンミンゼミ。私が小学生くらいまで、このセミはさいたま市では貴重種でした。セミは本来南国にいる昆虫で、イソップ物語の「アリとキリギリス」いう話は元は「アリとセミ」だったと言われています。Wikipediaによれば、セミは熱帯、亜熱帯に生息し、ギリシアなど地中海沿岸にも生息していて、古代ギリシアでは文学でも取り扱われているが、北部ではあまりなじみが無い昆虫のため、ギリシアからアルプス以北に伝えられる翻訳過程で改編された、とあります。そんなわけで、まだ温暖化が進んでいなかった小学生の頃はミンミンゼミは家の周りには殆どいませんでした。たまに「ミーン、ミーン」という鳴き声を聞くと、昆虫少年は色めきたって捕虫網を持ってかけつけたものです。それが今では全くの普通種です。
 但し全て温暖化で説明がつくわけでなく、南方系のセミでクマゼミという種類がいます。これも北上している、という話があったのですがどうも最近10年、頭打ち、というか関東では定着していません。気温は十分高くなっていると思うのですが、種の北上は気温だけの問題ではないようです。
 写真右はヒグラシです。このセミは発生している期間が長く、7月から9月まで鳴き声を聞くことができます。朝と夕方に鳴くことが多いのですが、三貫清水の森では薄暗いところが多いので、結構昼間から鳴いています。秋口になって、涼しい風が吹いてきた頃の明け方に聞く「カナカナカナ」という鳴き声は何とも風情があって、俳句でも作ろうか、という気を起こさせます(実際作ったことはないですが)。
 ところで、セミに関する名言として、ギリシャ時代の哲学者クセナークスの「蝉の生涯は幸いなるかな/彼らは声なき妻を有すればなり」というのがあります。作家の北 杜夫さんが、随筆「どくとるマンボウ昆虫記」で書いたのが最初と思われますが(その後の随筆でも出てきます)、新聞やテレビでも北 杜夫さんのファンと思われる記者が引用するので時々見聞します。皆さんやはり「妻」には苦労されているのですね。




















                                                           2011/8/28 馬場一秋