お盆の間、8月9日報告のナガサキアゲハを狙って捕虫網持参で三貫清水の森にでかけてみました。ナガサキアゲハは姿を見たものの捕獲できなかったのですが、同じくらいの価値のある2種類のチョウを捕獲しました。一つがこのアカボシゴマダラです。もう一つはムラサキツバメという種類ですが、これは追って報告します。
このアカボシコマダラも南方系のチョウです。しかし、関東地方に居るのはツマグロヒョウモンのように温暖化の影響ではなく、真剣に考えねばならない問題が背景にあります。
私の持っている図鑑(小学生の時買ったもの)にはこのチョウは、我が国では奄美大島にしかいないと書いてあります(当時沖縄は米国領)。外国ではベトナムから中国、台湾、朝鮮半島、沖縄に分布するとあります。
ところが、1995年秋ケ瀬公園などで突如このチョウが発見されました。これは一時的な現象でしたが、次に1998年に神奈川県藤沢市で発見され、その後、鎌倉市や逗子市など神奈川県の南部で見られるようになり、完全に定着し今日に至っています。
そして、特徴を確認した所、神奈川県で発見されたのは奄美大島にいる種類でなく、中国大陸にいる種類であることが分かりました。これは、地域として離れすぎていることや、突如発見されたことなどから人為的な持ち込みの可能性が高いといわれています。
つまり誰かが意図的に「放チョウ」した外来種なのです(飼っていたのが逃げ出したという可能性もありますが)。となると生態系への影響が心配になります。しかも、このチョウの食草は在来種のゴマダラチョウと同じエノキなのです。調査した方がいて、ゴマダラチョウは雑木林の林縁に生育する比較的大きい成木に幼虫が付いているのですが、アカボシゴマダラはそのような環境では見つからず、広場や道路脇の日当たりがよいオープンな環境に生育する0.5mから2.0mぐらいのエノキの幼木を好んでいるということで、「棲み分け」ができているようです。
昆虫は、植物と違って清掃活動で「外来昆虫の抜き取り」というわけには行きません。8月8日のレポートにあるように、ゴマダラチョウも今の所元気です。アカボシゴマダラは美しいチョウで、この棲み分が続いて共存してくれれば良いのですが、ブラックバスのように、在来種を駆逐するようなことが起きないことを祈ります。
この報告は佐久間聡様のHP(
http://ikimono.net)を参照させていただいています。