昔は幻のチョウ!ツマグロヒョウモン

 

ツマグロヒョウモンといいます。メス(写真はオス)の前羽の先が黒いところからこの名前がつきました。私は中学生のとき、浦和市でこのチョウのメスを採集したことがあります。その当時これは「事件」でした。というのは、このチョウは南方系で当時の北限は確か静岡県あたりでした(東京都でも伊豆七島にはいましたが)。それが埼玉県で採集されたということは、北限が延びたということになります。

高校2年の時、クラスに生物部員の人がいてその話をしたら、「是非見せてくれ」という話になり、生物部員が何人かこの標本を見るためだけに、我が家におしかけてきたことがあります。私は文化サークルは軟弱であると決め付け、また、昆虫が好きということが子供っぽく思われそうだったので、生物部に入るなんてみっともないと考えて器械体操部に入り、鉄棒や吊輪や平行棒の練習に明け暮れていました。

そのツマグロヒョウモンは、遠く南方から飛んできたので羽には損傷がけっこうありました。しかし、生物部の部長の方(この方は3年生)は、感動した様子で標本を見つめ、「素晴らしい。大事にしてくださいね」と言ってくれました。その方は昆虫を愛していることを誇りにしている様子がはっきりわかり、生物部に入ることは決してみっともないことではないのだなと考え直した記憶があります。大事にすると約束したので、この標本は40年が経過しましたが、まだ標本箱で健在です。

ところが幻のチョウだったものが、今や関東地方でもよく見かけるようになりました。東京の三鷹にある野川公園という所でもありふれたチョウになったとどこかのホームページにありました。温暖化と食草(パンジーなどのスミレ類)の普及が原因といわれていますが、良いことなのかどうか。このまま温暖化が進むと世界はどうなってしまうのでしょう。

 

 2007/5/16 馬場一秋