紫の宝石 ムラサキシジミ

 

この夏三貫清水の森で、ムラサキシジミを確認しました。飛ぶのが速くて、捕まえてみないとわからないのですが、「これもいてくれた」と思うと安心感のようなものがわいてきました。紫というより青に近い色ですが、とにかく宝石のような輝きが綺麗です。逆に羽の裏は下のようにくすんだ薄茶色です。

これも南方系の蝶です。小学生のころ千葉県館山の近くで採集したことがありましたが、埼玉では稀でした。ところがやはり温暖化の影響で、最近では埼玉でも見かけるようになりました。ムラサキシジミは意外に市街地の公園でもよく見かけます。以前仕事の都合で神奈川県川崎市の宮前区という新興住宅地に20年ほど住んでいました。この地域では元森林だった所を公園や少年用の野球場に開発した場所が多かったのですが、樹木が結構あったせいかこのような場所でも姿をみました。

 

この蝶も幼虫時代の後半は体から甘い汁を出すため、蟻がなめにきます。クロシジミのページでも書きましたが昆虫の世界の共生は意外にあります。ただしこのムラサキシジミは蟻からどんな利益を得ているかはわかりません。

ムラサキシジミは普段は樹木の枝の間を飛び回ります。シジミチョウ科の蝶は、ツバメシジミやベニシジミのように地面に近い低いところを飛ぶのとこの蝶やウラギンシジミ、ミドリシジミのように樹木の間を飛ぶのに分けられるようです。蝶がどのように飛ぶかということは、動物行動学の論文になるようなテーマで奥が深いのですが、食草(幼虫時代に食べる草)の影響が強いそうです。蝶がどう飛ぶかを研究して何になるかと思う人も多いと思いますが(私でさえそう思った)、最近では公園を設計する際に、どんな植物を植えるとどんな蝶が集まってくるか、それが公園のテーマと合致しているかを決める時などに役立っているそうです。

 

2003/11/30 馬場一秋