貴族に変身 キタテハ秋型

 

キタテハの秋型の季節がきました。色も形も夏型より格調高い姿(と私は思う)で登場しています。

某財界人のエッセイでこんなのありました。子供のころ昆虫少年だった彼は、ある秋の日採集に出かけると、シータテハがとまっているのを発見しました。羽の裏は濃い紫色に近く、表はオレンジ色で、裏表とも黄色に近いキタテハの夏型とは明らかに違う。このシータテハというのはキタテハに近い種類なのですが、平地には生息せず少し山地に行かなければ採集できない蝶で、昆虫少年にはあこがれの蝶。胸をときめかせて採集した彼ですが、よく見るとどうもシータテハとは違うことに気づく。それがキタテハの秋型だったのです。

私は、羽の色の裏表のコントラストのほか、縁のギザギザが深くなる点が秋型に「格調」を感じる理由です。シータテハは、羽の裏はほとんど黒で、ギザギザは更に深く、形はやや小さく細めの感じです。並べて比較すると違いはすぐわかりますが、子供の頃、図鑑の記憶だけだと間違うのは無理ありません。

写真はセイタカアワダチソウにとまっていますが、鴨川の土手で撮影したものです。この時期鴨川の周辺はセイタカアワダチソウの花盛り、キタテハだけでなく、やはり今が盛りのヒメアカアテハもそっちへ行ってしまいます。三貫清水の森周辺はキチョウやヒメジャノメ、ルリシジミなどがいますが、タテハチョウの仲間はあまりいません。キタテハもずいぶん探したのですが飛んでいる姿を少しみるだけ、撮影チャンスはありませんでした。短い期間ですが、三貫清水と鴨川周辺で生息する種が分離する時期と言えるかもしれません。

2003/11/3 馬場一秋