嫌われものだけど赤ちゃんは可愛い カマキリ

 

8月末に南池近くでこの写真を撮りました。昆虫愛好家の間でもカマキリが好きという方はあまりいないようですが、実は私もそうです。まず肉食で常に攻撃的なこと。ちょっかいを出すと前足を上げ、ボクシングのファイティングポーズに似た姿勢をとります。いつも顔をギョロギョロ左右に動かして獲物を探しています。ちなみに昆虫で顔を動かせるのは、カマキリ以外には同じ肉食のトンボの仲間だけ。蝶や甲虫類は、顔(どこが顔かわからないですが)は動かせません。セミが本来のリズムでなく断続的な鳴き方、例えばアブラゼミがジワジワジワでなくジー・・・ジー・・・と鳴いている時は、まずカマキリにつかまっていると考えてよいでしょう。

更に決定的なこととして、交尾の後で雌が雄を食べてしまうという行為があります。確かに雌が産卵に備えて動物性タンパク質を摂取するということは生物的には合理的ではありますが、愛する(?)夫を食べてしまうという行動に、皆生物の雄としての抵抗があるようです(女性の昆虫愛好家がどう思っているかわかりませんが)。コオロギの仲間でも雌が雄を食べることがあるので、カマキリだけが悪いというわけではないですけれど。

カマキリの雄の求愛は命がけです。動くところを見つかるとたちどころに食べられてしまうので、背後からそっと迫らねばなりません。うまい具合に接触できる範囲に近づくと雄は雌の背中にとびのって思いを告げる(交尾する)のですが、運悪く途中で見つかってしまった奴は、交尾の前に食べられてしまうのです。人間の雄の皆様、カマキリでなくて良かったですね。私がカマキリだったらとっくに命は無くなっていたと思われます。

こんなカマキリですが、生まれたばかりの時はとても可愛いのです。カマキリの卵は麩のような外観をしていて、木の枝に産み付けられます。一つの卵の中から、何十匹もの子供が出てきます。以前カマキリの卵を取ってきて、飼育箱に入れてベランダにおいておいたのですが、忘れてしまっていました。ある春の日会社から帰ると、妻が「カマキリの格好をしているのだけど、小さいのがベランダにいっぱいいる」といいます。カマキリが誕生し、飼育箱の隙間から出てきていたのです。カマキリはバッタの仲間と同様蛹の期間がない(「不完全変態」と呼ぶ。蝶のように蛹があるのが「完全変態」)ので、卵から出てきたときに成虫と同じ形をしています。1cmにも満たない赤ちゃんカマキリは、親の猛々しい姿とは違って大変可愛い。いろいろな生物がいるのが自然、カマキリも三貫清水の森の生態系を構成する立派な一員ですので、赤ちゃんに免じて大切にしていきますか。

2003 9/15 馬場一秋