実は2種類あった! キマダラヒカゲ

 

今も昔もいやになるくらい数はたくさんいる蝶です。樹液を吸いますが、数匹がまとまって木にとまっているのをよく目にします。人なつこい蝶で採集をしていると体にとまって汗を吸ったり、捕虫網にとまったりすることがあります。こちらは「俺は珍しい蝶を探しているのだ。君はもうたくさんなのだけど。」と思っていますが、彼らは挨拶にきます。あまり数が多いので、可哀想でしたが、小学生の頃は捕まえて羽をむしってあそんだりしていました。私の影響で少し蝶の名前を覚えた母親から、泥で顔や服がまだら模様となって帰宅すると「キマダラヒカゲになって帰ってきた」などと言われていました。

ジャノメチョウ科に属し、年に2回発生します。1回目と2回目の間がちょっとあくため、やたら飛び回っていたこの蝶が、しばらく少なくなる時期があります。その時期になると、夏でなくなったような気がして、あまりに多くてうんざりしていたのが、早く2度目の発生してくれないかなという気持ちになるのが不思議でした。

この一番平凡な蝶が、他のどの蝶にもできなかったとんでもないことを引き起こしました。1種類と思われていたのが実は2種類いたのです。私の持っている昆虫図鑑は小学生の時(40年前。年がわかりますが)買ったものですが、これには、「キマダラヒカゲ」というのは1つの種類となっています。ところが1970年に、それまでは同じキマダラヒカゲの平地型と山地型と思われていたのが、別種類であることが確認されたのです。新種の発見はマニアにとってはノーベル賞や国民栄誉賞に匹敵するものですが、それが飽きるほど多いこの蝶で実現した!皮肉といえばそうですが、粘り強く調査した発見者(高橋真弓氏という人。女性のような名前ですが男性)にはただただ脱帽です。

平地と山地なのでそれぞれ「サトキマダラヒカゲ」と「ヤマキマダラヒカゲ」と命名されました。どこが違うかというと、赤丸で囲った3つの点が「サト」はほぼ直線上に並び、「ヤマ」は乱れるということ、「サト」速く「ヤマ」はゆっくり飛ぶことだそうです(私が調べた範囲ではこうでしたが、間違っているかもしれません。正確にご存知の方いらっしゃれば教えてください)。ただし、ジャノメチョウ科の蝶の羽の点は同じ種類でも微妙に違うことが多いため、私もはっきり区別できる自信はありません。写真のものは三貫清水で撮影したので、「サト」と思われます。

もしかすると、「ヤマ」とも「サト」とも違う第3のキマダラヒカゲがいるかもしれません。捕らえまくって、羽の模様の比較をしてみようとする方いませんか?もしかするとちょっとあか抜けた「トカイキマダラヒカゲ」とか、海辺にしかいない「ハマベキマダラヒカゲ」の発見者になれるかも。

 

2003/9/6 馬場一秋