2011年の観察結果について

2011.09.05

2011年の観察結果を見るとき、なんといってもまず気になるのは、観察総数が2010年の半分以下に留まったことである。特に例年最も数多く見られる7月下旬から8月上旬にかけて少なかったことである。

総数の減少について連日観察記録した者の実感としては、まず7月下旬から8月上旬に気温の低い日が続いたことを挙げなければならないであろう。

図は浦和観測点でのこの4年間と平年、69月の旬別の平均気温である。これを見て気づくのは、@2010年は、6月から8月の気温が平年に比べてたいへん高かったこと、A2011年は7月上・中旬は気温が更に高かったが7月下旬と8月上旬は2010年よりかなり低かったことである。

 


もちろん、ほたるの発生数はたくさんの要因が複雑にかかわりあって決まるもので、気温だけ、それも羽化時期の気温だけでうんぬんできるものではないだろう。しかし観察者の実感としては、2011年の7月下旬と8月上旬の低温傾向を挙げないわけにはいかず、大きく影響しているであろう。

もうひとつ注意すべきことがある。もともと年ごとの変動がかなりあるのではないか。果樹栽培では「隔年結果」といわれる現象があるとされている。ある年にたくさん実がなると(生年:なりどし)、そのため樹が弱って翌年はほとんど実を結ばない(年切:としぎれ)。これを繰り返す現象である。同じことがほたるの発生にもあるのではないか。

ヘイケボタルの餌とされるカワニナやタニシ、ドジョウ、オタマジャクシやヤゴなどの発生にこうした変動があると、ほたるの発生にも影響するであろうと考えられる。

結果として2011年は前年より総発生数が減少したが、今後に向けての傾向として、それほど悲観する必要はないと思っている。

若本孝雄